昨日 私の友人M子から久しぶりの電話があった。M子は電話で私の声を聞くなり、「Uさんもホントっ 同じ顔が好きだよね~ あたしゃ驚いちゃったよっ!」と興奮気味に叫んでいた。


Uさんとは、私が20代半ばの頃勤めていた、ある会社(業種でいえば美容関係)のオーナーというか2代目社長である。Uさん自体がその当時というか、今もそうかも知れないが、メディアに出たり、派手な言動をとったりする人で、知る人ぞ知るある意味有名人である。M子とはそこの会社で知り合って10数年以上仲良くしている。ちなみにM子はいまだにその会社で働いている。


              


入社したきっかけだが、当時、20代半ばだった私が、そこの会社で人事募集をしているのを見つけた時、当時別の会社で定職に就いていたのにも関わらず、ほとんど物見遊山(当時の私は今よりもミーハー度が高かった)で、そこの人事募集に応募してみたのである。


私が応募したのは、一般事務だか受付だかそんな感じ(←うる覚えです。ごめん)だったのだが、筆記試験を受けて、2次面接を受けた後、流れのままに進んでいったのだが、結果がすごかった。なぜなら私がついたポジションはU社長の個人付秘書だったからだ。


考えてもみなかった展開にサプライズした私だったが、華やかな業界だし給料も当時勤めていたところよりも格段いいし、結構イージーに前の会社を辞めその会社に転職をしてしまったのであった。


最初 「社長の個人付秘書を任される私って、そんなに優秀?!すごい!」なんて自画自賛していた私だが、そこに勤め始めてから理由が分かってきた。


私が選ばれたのは優秀だったからではない。私の顔がUさんが好きなタイプの顔だった。それだけなのである。私の前任の秘書もその前の秘書も、その前のずっと前の秘書も、Uさんの奥さんも、み~んな同じ顔なのだ(実物を見たり写真で見たんですけどね)。世の中自分と同じ顔の人間は3人いるとか、言うけど、あれは嘘。もっといるんだよね~、世界は広い。そりゃ個性は人それぞれだから、それによって多少オーラや感じは違うけどね。ちなみに私はその中で一番『華』がありましぇんでした。綺麗じゃないし、自信もない。みなさん「社長秘書!!」って感じの神々しいオーラだけど、私がその中で一番オーラダウンしていましたな。しかし、しかし、でもいるんだよね、自分と似た顔の人間って。ほんと気持ち悪い思いしました。でも不思議だったな。とにかく、つまり、Uさんは、自分の周りに置く人の顔は決まっていて、つまり私が選抜されたのは、そういうことってことなのだ。顔フェチというか、こだわっているというか、単なる変態なのか良く分からないが、U社長は「その顔」にこだわっているらしい。


うちの親や周りの友人は「あんた 社長秘書とかだったら社長の愛人とかにされちゃうんじゃないの~?」なんて心配してて、私も勝手に貞操の危機を感じて、万が一のために新しい下着を何枚も買ったりしましたが、なんてことはない心配は全く無用でした。


秘書経験が全くない私が、秘書経験のある私の先輩の秘書の方々のように、事細かな気遣いなど全く出来るわけもなく、気づくわけもなく、また一方で、2代目のせいなのか、元来の特性なのか、常に頭の中にバラの花が咲き乱れているようなポジション意識が欠如しているバカ社長まんまのU社長に終始イライラしていた私と彼の間には、色めいたlove affairなぞ生まれる要素など一切なかったのであった。そんな色めくる事は私たちの中には介在せず、U社長から「この鬼ババー!なんでそうやってすぐに怒るんだよ~!!ヒステリー!」とか言われる毎日で、「なんでジジーに、ババァって言われるんだよっ!」とブツブツ言いながらしょっちゅう切れていた私だったのでしたのだ。思い起こせば、当時は、女を捨てていた戦いの日々でした。


結局 その2代目社長のオモリに何年間かの貴重な青春を費やしてしまった私は、その後インターネットバブルに突入前の、当時ベンチャー企業といわれる会社にひょんなことからスカウトされ、その会社を辞めてしまうのだが、今考えてみるといろんな意味で面白い会社だった。彼がTV出演するときにTV局に出入りして、有名芸能人の方々とも会えたりして、或る意味私にとって天職だった気もしましたな。ちょうど今から3年前くらいに原宿で、すごい偶然なのだが、人気のあるイタ飯屋で夕飯を食べていたとき、その店内で、トレンド好きのU社長にばったり出会い、ご馳走してもらった。働いていたあの当時は、U社長にムカムカしていて、正直消えて欲しいと真剣に思ったことさえある私だったのだが、「考えてみれば、U社長って、子供が大人になったような人で、悪い人ではないんだよな~。。」とゴチしてもらって考えをあらためた単純な私なのだった。だけど、あそこには、もうぜ~ったい!勤めたくないけどね。


話は戻るが、M子の話によると今度入ってきた社長秘書のぢょしも言うまでもなく私とクリソツらしい。声まで同じだとか。だけど、M子いわく「顔はアンタと似てるけど、悪いけど、今のカノジョの方がすごく綺麗だし、おしとやか」だそうだ。無念。会社の中でも社員から「U社長、相変らずこだわってるよね~」と言われているらしい。その社長秘書のぢょしも受難と分からず入社しちゃったんだろうけど、、、「頑張れ~!」と陰で応援しかできない私なのである。